黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
俺は思わず顔を上げ、


「はッ、離して……!」


と、悲鳴に近いかすれ声をあげながら、急いで翔太の右手を両手でつかむ。

見上げた翔太の顔が、微かに欲情しているように見え、吐き気がする…。


しかも、その熱を孕んだ視線と俺の視線が交差した瞬間、ヤツは、ニヤッ…と笑った。

直後、俺の背筋に、ゾクゾクゾクッ…!と酷い悪寒が走り抜ける。


「…どしたの七夜きゅーん?
なんかオレたちに話しがあったんじゃなかったのー?
んー??」


そんな軽口を叩きながらも、俺が必死で押さえているはずの翔太の右手は、止まらない。

それどころか、俺の中心部に向かって、じわじわ…と這い上がっていく…。


……こ、いつ……

……まさか……男……が……!!?


そこまで考え、気持ち悪さとパニックで支配されかけた俺の脳に、低く静かな声が届く。


「…抵抗すんなよぉ、転校生?
この先永遠にぃ、俺たちにイジメられたくなかったらなぁ…?」


静かながらドスの利いたその声は、先刻の虫酸とは異なる、純粋な恐怖による悪寒を俺の体に植えつけた。

“ 抜き差しならない事態 ” とは、まさにこういったことを指すのだと、場違いに冷静に思った。


しかしそれでも、

『このまま黙って、ヤツらに蹂躙されるくらいなら……!』

と、思わず周囲に助けを求めそうになった意思を、翔太からのだめ押しが遮断する。
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