ジルとの対話
ティティは湖を歩いては水面を駆ける光を見つめていた。
ジルの音楽は彼女の所まで届いていた。
彼女は、誰ともあっていない。
1人だった。それは彼女を守り、内なるエネルギーを彼女の内側に貯めた。
魂が地を離れて現し世を幻に変えると、彼女はただ1人大いなる魂の御下へたどり着いた。
大いなる魂は彼女を愛し地を生きる事を平安にしてゆく。
ジル、彼は彼女の神そのままに抱き寄せた。
「ジル」
ティティはジルを見上げて呟く。
「ティティどうしたんだ。」
ひざに乗せたティティの表情はほころんで、ジルの声が彼女の緊張を解いたようだった。
「ジル、私あなたがいなかったらって想像したの。とても怖かったから私寝ているあいだにあなたの寝床に忍び込んだわ。でもジルってば全然起きなかった。」
ティティは彼の膝に頬を寄せて救いを求めていた。
綺麗な目をしている黒い影は優しさを抱き、ジルを支えた。
「どうしたんだい。そんな事考えたりして。」
ジルが、にこやかにティティの頭をなでた。
「わからないけどステラの話を聞いたからかしら。デビットと別れて、フランツを選んだからよ。私、そんな事があるなんて露ほどもわからないの。」
ティティはジルの胸に頭をのせた。
もう一度ジルは彼女の頭を撫でた。そして、ふたりはついに抱きしめあって、そままでいた。

春の風が包む午後は、恋人たちに光を放ち行く先をてらしていた。
「ジル、申し訳ないが、キースが来たよ。」
優秀な執事、ベルリオーズは朗報を携えて、2人を引き離した。
「ベルリオーズ。ありがとう。」
ジルは苦い笑いを含んで言った。
「キースが来たのね。」
ティティは感極まって叫んだ。






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