巫女と王子と精霊の本





「…そういう事なら、任せて!!フェル、きっと、アルサティアが大好きになるよ!!」


『期待してるよ』



フェルは笑いながら本を目の前に出した。


『新たな世界の、管理者に…』



フェルの声が急に大人びる。



本が眩い光を放つと同時に、フェルの姿が変化していく。




「それはっ………」




フェルの姿が大人の姿へと変わっていた。フェルはニコッと笑う。




あ……この笑顔、フェルだ。
じゃあやっぱりこの人は……




「フェルっ…」


『新たな世界を綴りし者に…その証を与えよう』




大人のフェルが私の額に口付ける。
その瞬間、額に紋様が表れる。



『その証をもって浅夏 鈴奈をアルサティアの管理者とする』


―ドクンッ


「!!!」



胸が焼けるように熱い。
私の目の前の本が私の体の中へと吸い込まれていく。




『これで君は世界の管理者となったんだ。僕の創った世界のひとつ、君に任せるよ』


「う、ん…任せて!」



まだ残る胸の熱さに誓う。
この世界を幸せな世界にしてみせる。


きっと…どんな世界にも負けないくらいに笑顔の溢れる世界に……



『さぁ、境界を越えるよ!君の言葉で言う素敵な事がおこるかもしれないよ』

「え、えぇ!?」


『さぁ、行ってらっしゃい!』


「え、わぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



―バリンッ!!


体が何かにぶつかり、硝子が割れたような音が聞こえる。




その瞬間―…



―ブォォォォォォォッ!!!!



物凄い風の音とともに体がまた急速に落ちていく。


さっきと違うのは暗闇ではなく空が見えること。


これって…………本当に死ぬんじゃ…!!?



気づけばフェルも近くにいない。



ど、どうするのー!!?



『…鈴奈―…』


……え……?


聞き覚えのある声に胸がざわめく。
遠ざかる空から何かが落ちてくる。



「って……子供!?」


その子供は私の元へとまっ逆さまに落ちてきた。
その体を受け止める。


「あれ…っ…?」



この子…………知ってる…


よく見れば男の子で、漆黒の髪が風になびいている。




「…う…ん……」



男の子はゆっくりと目を開ける。
その瞳は紅だった。



それを見て確信する。
この子は……



「鈴君!!」

「しゅず、なぁ!」


私の名前を呼んだんだ。
まだ言えていないのが可愛い。



「でも…どうしてっ……」

『力を失ったせいだ』


「え―…」


鈴君の声だ!!
一体どこから……



『これは俺の転生の姿らしいな。これで、お前と一緒にいられる』


「鈴君……」



その言葉に涙が溢れた。


鈴君は…人として幸せになるんだ。
私がしてみせる。


「鈴君、幸せにする!!」

『ありがとう―…お前も幸せになれ、もう一人の俺…』



その言葉を最後に鈴君の声は消えた。


孤独だった私達。
それぞれの居場所を見つけた私達はきっと… 


今度こそ幸せになれるね……













































































































































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