巫女と王子と精霊の本
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―カイン城、執務室
「王様、また仕事をしているんですか?」
セレナが呆れたように俺に紅茶を出す。
「セレナ、王様はやめてくれ。エルシスでいい」
そう、あいつがいなくなってすぐに俺はカイン国の国王となった。
鈴奈が消えて1年、あっという間だったと思う。
国同士、種族間の平和協定を結ぶためにずいぶんと時間がかかったな。
あの災厄から、人の争い、種族の争いなどいかに馬鹿らしいかがよくわかった。
俺たちの手は、傷つけ合う為にあるんじゃないというのに…
「エルシス様、考え事ですか?」
「まぁ、な」
「巫女様の事ですね?」
「あぁ…」
あと、どれくらいの時が過ぎれば
俺はあいつを想って苦しまずにすむんだろうな…
鈴奈は……俺の事なんてわすれたか?
それとも、魔力にのみこまれて存在じたいが消えてしまったんだろうか…
あの後、城に戻ったが鈴奈も鈴もフェルの姿も消えていた。
もうこの世界にはいない、すぐに悟った。
「巫女様は元気でしょうか…」
セレナは遠い目をして寂しそうに呟いた。
同じように鈴奈の姿を思い出しているんだろう。
「そうだな……」
どの世界にいても、あいつが幸せなら…
俺の心も少しは救われる。
でも願うなら……
「今日は教会の視察でしたね」
空気を変えるようにセレナは話を変える。
「あぁ、そろそろ出る」
そうだ、今日はカイン国とマニル国で共同建設した教会の視察の日だ。
災厄の被害者を弔い、これから多くの生き物達の心を救えるように…
あの、ハミュルの花が咲いていた丘だ。
「でしたらこれもお持ちください」
セレナが純白のはなばかりを集めた花束を俺に手渡す
「なんだ、これ…ハミュルの花に似ているが…」
だが、ハミュルの花はもう……
「これは、リコリス。教会で神に純白の花を捧げると、願いを一つ叶えてくださるそうです」
願い……か…………
願うたけなら、許されるのか………?
「じゃ、願ってくるか……」
「はい。私の分もしっかり願ってきてくださいね」
セレナには俺が何を願うのかばれてるみたいだな…
俺は苦笑いを浮かべて視察へと向かった。