巫女と王子と精霊の本
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『まさか、こんな結末を迎えるなんてね』
妖精、フェルは苦笑いを浮かべた。
予想外、規格外だ。
こんなつもりじゃなかったんだけどな……
一冊の本を手にとりページを開く。
―パァァァァッ
その本は、光を放ち、温かい風が僕を包み込んだ。
愛にあふれた本。あの時、消えかけていた世界が、今では強い存在感を放っている。
『彼女は、期待に応えるどころか、期待以上だったなぁ』
何故か、僕の心も温かい。
久しく忘れかけていた感情だった。
『フェル、何を笑っているの?』
そこに、もう一人、妖精が現れた。
『やぁ、スフィ。ちょっと良いことがあったんだ』
本を手に、僕はスフィに笑いかけた。
『あなたが笑ってるの、久しぶりに見たわ。あなたの世界の管理者はついにあなたの心までも開いたのね』
『あれ、僕、スフィに管理者の話をしたっけ?』
僕の記憶が正しければ、鈴奈が管理者になった話は誰にもしていないはずなんだけど…
『ふふっ、私…あなたの管理者に助けられたことがあるのよ』
『え、えぇ?』
そんなの初耳だ。
いったいどうして……?
『私の世界の管理者を救ってくれたの。誰よりも優しくて、そして自分には価値がないと思っている彼女に生きてこその幸せをくれた少女…。彼女に世界を管理させたのは正解ね』
『ははっ、どうやら彼女は僕の手には負えないほどお転婆らしい』
他の世界まで救ってきちゃったなんて………
彼女を管理者にした時のことを思い出す。
《…そういう事なら、任せて!!フェル、きっと、アルサティアが大好きになるよ!!》
『ははっ…大好きになる……ね』
一度は壊そうとした世界。
その世界の魔王とまで心を通わせ、王子を導いた少女……
君が見せてくれる、新しい物語に………
今度は僕が惹かれていく。
『巫女と王子と精霊の本……か』
題名を取り戻したその本は、もう消えることはないだろう。
鈴奈が愛し続けてくれる。
『また、物語を作ろうかな』
『あら、めずらしいわね』
『うん、今なら…何か生み出せる気がするんだ』
そう、まるでこの物語のような………
愛しく、誰かの心を変えてしまうくらいに素敵な物語を…………


