巫女と王子と精霊の本
私がこの世界へと帰ってきて3年。
エルシスは王子から王様となっていて、すぐに結婚して……
まぁ、とにかく色々あった。
鈴君も大きくなって6才くらいになった。
鈴君はもともと子供の姿で現れたから、正確な歳はわからない。
誕生日は鈴君が生まれ変わった日、私が帰ってきた日になった。
その一年後、ルカが生まれた。
ルカはエルシスに似て漆黒の瞳、黒髪、浅黒い肌だった。
二人とも元気な男の子だ。
「おかあしゃん!」
ルカがギュッと抱きついてくる。
ルカを膝に座らせ、また本を開く。
「巫女は帰ってきた、それで俺のお嫁さんになったんだぞ、ルカ」
私が話し出そうとすると、エルシスが勝手に話し出す。
「おかあしゃんはみこ?」
「巫女だよ!」
ルカと鈴君が二人ではしゃぎ出す。
そう、私はフェルからこの本を託され、この世界を見守っている。
何も綴ることなく、ただ見守る…
それがこの世界の人々が未来を自分の意志で歩んでいけるように…
これが、私の世界の管理の仕方…
いつか、私が死ぬとき…
この世界の管理者はこの子達に引き継いでほしい。
だから、私に伝えられる事はたくさん伝えていこう。
「いつか、あなたたちがこの本を継ぐときは…たくさんの愛情を注いで、温かく包むような優しさで見守っていってね」
「世界の管理者…か、また大きなものを背負ったな、鈴奈」
エルシスが苦笑いを浮かべながら私を見る。
「それなら、エルシスもでしょ?この国の…ううん、世界の人々の生きる場所を守ってる」
王として忙しいはずなのに、こうやって私達との時間も大切にしてくれている。
「私達はきっと不思議な夫婦だね!」
「はっ!違いないな」
二人で笑いながら互いにわが子を抱き締める。
「ぼくはすきだよー!」
「僕だって、この世界が好きだよ!」
ルカと鈴君がこの世界を好きだと言ってくれる。
この世界はきっと永遠に愛されていくんだろう。
「なぁ、鈴奈。今日の夜は久々に二人で過ごさないか?」
そんなエルシスからの素敵な誘いに照れながらも頷く。
「照れてるのか?初なままだな、お前は」
エルシスは愛しそうに私を見つめる。
そんなエルシスから目を反らした。
「あんまり、見ないで!」
「いや、断る」
即答されてしまう。
ますます私は照れてしまう。
これには一生慣れそうにないなぁ…
ルカをぎゅっと抱き締めながら、ため息をつく。
「鈴奈、愛してる」
「エルシス……私も愛してる」
私達はこれから同じ時を生きる。
自ら望んだ未来を綴り続けていく。
私の愛した世界、アルサティア。
新しく出来た家族とともに幸せになろう。
いつか、この物語を目にした誰かが、私と同じようにこの世界を愛してくれますように…