巫女と王子と精霊の本


―あれって何?
あなたは何を見たの?


『…聞こえたんだ…』


聞こえたって何が…


『咆哮が、どこか遠くの空から聞こえたんだ』


咆哮って、何かの鳴き声だよね。


ってもしかして…



一つだけ心当たりがある。
次の物語だ。


確か竜が町や人を襲って、エルシスがそれを助けて…


「!!!」


怪我をするんだ!!!


「次から次へと…」


物語は待ってくれないんだね…


私は本をぎゅっと抱きしめる。それからお馬さんを見上げた。



―落ちついて。大丈夫、私が何とかするから!


『君が?』

―そう、私が!

『頼りないよ』

―失礼な!!
私これでもアルサティアの巫女なんだからね!!


『何それ』


「はぁぁあー…」


盛大なため息が出た。


「お、おい馬達が静かになったぞ!!」


あ、本当だ…



いつの間にか馬達が静かになっている。


それどころか他のお馬さん達も私の所へ集まってきた。


「巫女様は本当にすごいお方だ!!」

「巫女様すげぇ〜」



私は皆に見られながらもお馬さん達を見渡す。






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