巫女と王子と精霊の本
―皆、聞いて。
その咆哮は多分竜によるものだと思う。
『竜!?』
『竜は遥か向かしに別の大陸へと渡ったはずだぞ』
『確かにあの咆哮は空から聞こえたな』
『怖いよぅ…』
お馬さん達が一斉に喋り出す。
―私、聖徳太子じゃないからいっぺんにはわからないよ!!
って分からないか…
『しょうとく…?』
『何それ』
『そんなのはどうでもいい。巫女とやら、これから何が起こるのだ?』
どうでもいいって言われた…
なんか少し凹む…
―竜がこの地を襲うの。でも慌てないで、必ず何とかするから!
『…人間が竜に敵うのか?』
―戦う事の無いように私がなんとかする。その方法が分かったら伝えるから、今は落ちついて私の事を信じてほしいの。
『…人間の、それも女に出来るのか?』
―出来るかじゃない。やるんだよ!!
私はこの世界を守るって決めたんだから…
『ううむ……。分かった、お前を信じよう』
渋っていたお馬さん達もとりあえずは頷いてくれた。
「もう大丈夫!お馬さん達も落ち着いたよ!」
そう言って振り向けば皆が安心したようにホッと息をついた。
『あ、そうだ』
一頭の馬が私に歩み寄る。
―どうしたの?
『僕はもっと乾燥した草が良いって言っといて』
「…あはは……」
ここの草はどうやらお気にめさなかったようだ。