巫女と王子と精霊の本
「ただ…守りたいだけ…」
この物語が大好きなだけ…
それが消えちゃったら、私の心も消えちゃう。
一番孤独だった時、私の孤独を埋めてくれた温かい物語。
「守らなきゃ……」
私は両手を見つめた。
この手で守れるものがある。私にも出来る事がある。
「…フェル、元気かなぁ…」
私をこの世界に飛ばした本の精霊…
「私、頑張るよ…。フェル、見ててね…」
私は本をギュッと抱きしめて瞳を閉じた。
太陽の光が温かい…
あぁ…眠くなって…きた…
どんどん意識が遠くなる。
―ザッ
遠くで草を踏むような音がした。
「…こんな所で…風邪をひくぞ…」
私の大切な、大好きな人の声が聞こえた。
「…大…好き……」
せめて夢だけは……
「傍に……いて……」
私の傍に、夢だけは…
目が覚めたらちゃんとあなたの友達に戻るから…
今だけは…
許してね……………