secret name ~猫と私~
それを隠して、手元の書類を整理し、ファイリングしてからカバンに入れ、立ち上がる。
書類のチェックぐらい、家で出来るだろう。
少し乱暴に入れてしまった気がするが、折れていないことを祈る。
ファイルに入れているし、多分大丈夫だろう。
端が折れたぐらいならばなんとか直せる。
持ち帰る書類の中に、上層部への提出用のものはない。

それから小さく、しかし気合いを入れるように息を吐き、立ち上がって座りなれた椅子をしまった。


「お先に失礼します。お疲れさまでした!」


半ばやけのように、挨拶して出ていく。
大股でずんずんと、会社の中を歩いた。

自分が今、どんな複雑な顔をしているのか。
悔しさと恥ずかしさが混じった、さぞかし微妙な顔をしているに違いない。

その後ろを少し嬉しそうに、セッテが着いてきた。
この笑顔が、曲者かもしれない。
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