secret name ~猫と私~
会社を出て、いつもよりも人の多い地下鉄に乗って、マンションに着く。
満員電車は苦手だ。
得意な人もいないと思うが、上京して何年も経つのに、一向に慣れなかった。
その間もセッテは隣にいたが、話しかけてくる彼を佳乃は無視し続けた。
返事をしたい気持ちはもちろんあったし、笑える話もあったが、自分一人が気まずさを感じているようで、余計に返事が出来ず、相づちさえ出てこなかった。
意地になっていたのも、あるかもしれない。
人の多い電車は、まだ良かった。
二人きりのエレベーターは、さすがにお互い無言になってしまった。
「お邪魔するで~」
セッテはマンションに上がり込み、すぐにキッチンに向かう。
朝と同じエプロンをして、昼に食べ終わった弁当箱をシンクに置いた後、てきぱきと洗い出した。
先ほどの気まずさを忘れたいのか、水を得た魚のように動いている。
いい加減一人になりたくて、ようやく佳乃は口を開く。
「ねぇ、いつ帰るの?」
ぶっきらぼうにそう聞けば、セッテは少し悲しそうな顔をした。
その顔を見ると、申し訳ないような気分になってしまうが、いつも一人だったこの部屋に、誰かが居る事が、とにかく落ち着かないのだ。
「帰って欲しいん?」
「落ち着かないだけ。誰かがここに居るのが。」
正直に話せば、セッテは笑った。
洗い終えた弁当箱は、水切りかごに整列して、冷蔵庫から朝に仕込んだらしい材料を出し、フライパンを熱している。
「慣れて欲しいもんやな。今日まだ1日目やし。」
笑いながらも、手は器用に料理を作っていく。
満員電車は苦手だ。
得意な人もいないと思うが、上京して何年も経つのに、一向に慣れなかった。
その間もセッテは隣にいたが、話しかけてくる彼を佳乃は無視し続けた。
返事をしたい気持ちはもちろんあったし、笑える話もあったが、自分一人が気まずさを感じているようで、余計に返事が出来ず、相づちさえ出てこなかった。
意地になっていたのも、あるかもしれない。
人の多い電車は、まだ良かった。
二人きりのエレベーターは、さすがにお互い無言になってしまった。
「お邪魔するで~」
セッテはマンションに上がり込み、すぐにキッチンに向かう。
朝と同じエプロンをして、昼に食べ終わった弁当箱をシンクに置いた後、てきぱきと洗い出した。
先ほどの気まずさを忘れたいのか、水を得た魚のように動いている。
いい加減一人になりたくて、ようやく佳乃は口を開く。
「ねぇ、いつ帰るの?」
ぶっきらぼうにそう聞けば、セッテは少し悲しそうな顔をした。
その顔を見ると、申し訳ないような気分になってしまうが、いつも一人だったこの部屋に、誰かが居る事が、とにかく落ち着かないのだ。
「帰って欲しいん?」
「落ち着かないだけ。誰かがここに居るのが。」
正直に話せば、セッテは笑った。
洗い終えた弁当箱は、水切りかごに整列して、冷蔵庫から朝に仕込んだらしい材料を出し、フライパンを熱している。
「慣れて欲しいもんやな。今日まだ1日目やし。」
笑いながらも、手は器用に料理を作っていく。