短志緒
「梨香は? そこんとこどうなの」
「今は付き合ってる男もいないし、結婚するにも相手がいない」
「適齢期なのに?」
「適齢期だから、これからちゃんと考えようと思ってる」
健吾は心底意外そうに顔を歪ませた。
私も健吾と同様、恋愛は不誠実で長続きしない。
誰かと付き合ったところで、必ず健吾を欲してしまう。
つまり彼氏ができても常に健吾と浮気をしていたことになる。
健吾は私から視線をそらしてため息をついた。
仕事中はオールバックにしている長い前髪のせいで表情までは窺えない。
そして一言。
「俺、邪魔?」
ズキンと、胸が大袈裟に痛くなった。
私が言いたいのはそういうことじゃない。
私の気持ちなんてこの10年で全く伝わっていなかったのだと、また少し腹が立って少し安心した。
「邪魔なら、ちゃんと退散するよ」
そんなにあっさり身を引くなんて。
10年も関係を続けてきたのに。
私に愛着とか、ないの?
じわりと目に涙が溜まる。
だけど、健吾の前で泣きたくなんかない。
「あんた、バカなんじゃないの?」