短志緒
「梨香」
健吾がブランケットを引っ張る。
だけど私はそれ以上の力で握り続ける。
こんな顔、絶対に見られたくない。
「泣いてんの?」
「泣いてない」
顔は隠せても、声まではごまかしきれない。
「梨香に泣かれると、すごく困るんだけど」
「勝手に困ってれば?」
「それって俺のせい?」
「他に誰がいるのよ。バカ」
つんつん。
ブランケットを引く力は優しい。
「俺、泣かせるようなこと言った覚えはないんだけど」
「はぁ? 脳みそほじくりかえしたい」
「グロいからやめて」
つんつん、がなくなった。
ああ、きっと面倒くさいと思われてるんだ。
もっともっと面倒くさくなれば良い。
もっともっと困れば良い。
健吾なんて私の10年分の気持ちに押しつぶされてしまえ。