短志緒
とにかく座って一休みしたいが、ひとりで入れそうな店は見当たらない。
公園のような場所も近くにはない。
だからって道にへたり込むわけにもいかない。
私はフラフラ歩きながら、冷や汗が流れるのを感じた。
その時。
「大丈夫?」
後ろから誰かに声をかけられ、振り返る。
知らないサラリーマン風の男だ。
「大丈夫です……」
私はなんとか笑顔で答えるが、大丈夫でないことは誰の目にも明らかだろう。
男は爽やかに笑った。
「タクシー呼んでるんだ。良かったら送るよ」
タクシー……それはありがたい、けれど。
チカチカした目で再び男を見る。
真面目そうだし、無害そうだ。
単に心配してくれているだけで、ナンパという感じもしない。
ここからうちまで、ざっくり1キロ。
この人ならきっと、送ってもらって大丈夫だろう。
早く帰宅したい一心の私は、酒のせいか判断力が鈍っていたんだと思う。
「助かります」
私はそう返事をしてしまった。