短志緒
「何やってんだよ! あの男にやられてたかもしんねーんだぞ!」
今度は生で怒鳴られる。
いつもはヘラヘラ笑ってる俊輔が、眉と目を吊り上げて怒っている。
自分でも大変なことをしてしまったと思っている。
俊輔に助けてもらって、安心して、私はしばらく声を上げて泣いた。
「ふぇ……ごめんなさい……ひっく……」
泣き顔なんて見せたことがなかったから、彼とて驚いているに違いない。
いつもすましている私がわんわん泣く姿に、さすがに困った顔浮かべている。
俊輔はまた私を抱きしめてくれた。
「もう大丈夫だから」
人気のない夜の歩道で、私たちはしばらく抱き合っていた。
俊輔のにおいと体温に包まれて、私は心底安心した。
「家まで送る」
私が泣き止むなり、俊輔は私の手を握って歩き出した。
きゅっと手を握り返す。
酒のせいで足元のおぼつかない私と一緒に、歩幅を合わせてゆっくり歩いてくれている。
頼りないヘタレだと思っていたことを、心から詫びたい。
俊輔は勇敢で、いざというときには頼りになる男だった。
抱き締めてくれた胸も、繋いでいる手も、大きくて温かった。
私の住むアパートに到着。
俊輔の手が放される。
「じゃ、おやすみ」
俊輔は一言そう言って、さっさと私に背を向けた。
温かかった手がどんどん冷えていく。
途端に不安がフラッシュバックする。
「俊輔!」
私の呼び声に、彼がゆっくり振り向いた。
「上がっていかない?」