とある神官の話



 どれくらいそうしていたか。


 秋の夜の寒さが足元を襲い、吐く吐息が白いのを見た時。それは"来た"。



 ランジットが合図を送る。そして―――一足先に駆け出していった。早い。それは闇に影を浮かばせて来た。
 風のように道を走ってきたハウゼンか跳躍。投げられたナイフを避けた。ランジットが居合。避けられる。着地。それは美しいまでの肌に、ひびを入れた"器"。

 魂を定着させた"器"。死体に定着させていないが、やはり、魂を定着させると人と変わらない姿となる。





「―――裏切り者には死を」

「物騒だな」




 男の声は重なって聞こえた。

 ランジットが距離をとる。そして、放った。しかし容易く男は避け、影が襲う。足首に纏わり付く影にランジットが後退。その入れ違いにハイネンが屋根から地上に着地。
 接近した―――――「!待ちなさい」


 鋭いハイネンの声に、ランジットが攻撃の動きをかえた。放った一線が腕を直撃。皿が割れるような高い音が響いた。地面に散らばるその破片。男がバランスを崩す。ランジットと男の間に、外套をはためかせたハイネンが立つ。四方には神官。





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