とある神官の話



 言われた言葉に一気に覚醒。うっかり席を立ちそうになった私に、ハイネンが笑う。何を馬鹿なことを。
 そもそも何で、と言った私に「まあ彼も有名人ですから。ふふふ」と返された。あちこち行っているハイネンも知っているなら、まさかもう全面的に知られてるのでは? いやまさか。

 急に聖都に帰りまたくなくなったのはいうまでもない。



 私は静かに生活したいのだ。出来ればその、彼氏というか恋人は欲しいけれど。変人じゃなくて、ストーカー予備軍なんかじゃなくて、普通の。

 ハイネンはまだ笑っている。腹立つ。近くで子供の声がした。





「ミノアの件、新聞に載ってますよ」

「ミノアのですか?」

「ええ。それから別件のと」





 ほらここに、と新聞を私に渡してきた。大きな見出しではないものの、ミノアの件が書かれてある。
 それと平行して、別のことも書かれてあった。指名手配犯の目撃情報と、悪質な犯罪。ミノアの件は、死者が出ていない点ではまだましなのかも知れない。だが、良いともいえない。

 ミノアに、指名手配されているヤヒアが出たとなると、色々と面倒臭い状況だったのだ。しかもヤヒアに遭遇したのは私やランジット、それからヨウカハイネン、怪我を負った神官くらいで、つまり、あれこれ話しを聞かれることとなったのだ。
 それを一日で終わらせ、かつ後は報告を直接するからと言ったのはヨウカハイネンだった。電話で聖都まで連絡を取ったあと、その取り調べめいたことをしていた神官が青ざめたのは一体何だったのか。





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