とある神官の話




「ま、私もしばらくは大人しくするつもりですよ。貴方も休暇申請なさい。聞けば色々と大変だったようで」

「ええまあ……」





 苦笑。
 子供が被害に遭う事件は参った。実際に巻き込まれ拉致られたのだから。

 聖都といっても、事件が起こらないとはいえない。それでも昔に比べたら……などと聞いたことがあるが。今は昔とは違う。能力者といいそうでないものといい、闇に身を落とす者はあとをたたない。故に、仕事はなくならないのだが。

 満足な休暇もなく、こうしてミノアへと出発した私だった。だが、今度こそは休暇申請だ「大変ですね、貴方も」

 ふと視線を下げ、新聞を見た。そこにあるのは地方で雪が降った、という見出しだった。





「もうすぐですね。戻ったら、ハナタレエドゥアールに会いに行かなくればなりませんし、ああ、ヘーニルやエドガーにも会いに行く予定なんですよ」





 思わずぎょっとする名前が出てきたが、私は諦めて無視した。これはそう、ランジットが「暴走したらとりあえず聞いているフリだ」というアドバイスを活かした結果である。
 もっとも、一人であれこれ話しまくるヨウカハイネンは、しまいには眠っているランジットを起こすまでに時間はそう、かからなかったのだが。




「元気かな……」



 それは一体誰にあてた言葉なのか、私もわからなかった。




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