とある神官の話






「……ぶふっ」

「局長?」




 本命の報告書の後ろ側―――新たにくっつけてあるのがシエナの"報告書"なのだが。
 急に笑った俺に、室内にいた神官が声をかけてくる。それに俺は耐え切れず吹き出し、笑った。何事かと神官たちの視線を浴びながら、一人の神官にそれを見せた。
 神官は受け取り、目を通していく――――が。





「か、彼女は勇者なんですかね」




 何かと集まる神官たち。そこに書かれていたのは、それはもう素晴らしいものだった。




 ――――ロマノフ局長へ。

 シュトルハウゼン神官といい、エルドレイス神官といい、顔がいい人にまともな人がいない気がします。(以下略)




 ヨウカハイネン・シュトルハウゼンは神官である中でも名の知れた者である。「枢機卿になれって?はっ、そんなの面白くないじゃないですかばーか」的なことを平気で言ってのける、生粋の変人。
 ゼノン・エルドレイスに関しても同じようなもので、一言でいうなら変人。いいや、ゼノンの場合はシエナが関わると厄介なだけで、普段は普通といえる。


 あの二人は実力者だ。

 バックにはブランシェ枢機卿がいるし、よほどの馬鹿じゃない限りまず喧嘩は売らない。売ってもねちっこいものばかりだろうし、彼らはそんなの気にしない。
 腰を低くして媚びを売る者もいるのだが。彼らについてここまではっきり言うシエナはやはり、ただ者でない気がして来る。能力持ちの時点で普通ではないのだが。




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