とある神官の話
「何やら楽しそうですねえ。ヘーニル」
「なっ、おま、」
「来ちゃいました」
何が"来ちゃいました"、だ!
可愛くもなんともない言い方に、俺は急だったために焦った。浮かした腰をもとに戻す。
神官たちが逃げるように仕事へ戻るのを、俺は「薄情者め!」と見た。今ならシエナの気持ちがわかる気がする。
ミノアで行方不明となった、ヨウカハイネン・シュトルハウゼンがそこにいた。行方不明といっていたから怪我の一つや二つ……。いや、愚問だった。相変わらず神官服ではなく、動きやすい服装をしていた「あのハナタレに会った帰り道ですよ」
「あのさ、ハナタレって」
「フォルネウスですよ」
俺は頭をかかえたくなった。どこをどう見ても青年にしか見えないのがハイネンだが、実は人の二倍近く生きている。故に彼と同族ならばまだしも、彼からみたらみんなが"ハナタレ"ではないか。
しかも、現教皇であるエドゥアール2世の教皇のとなる前の名前――――つまり、フォルネウスという名前はエドゥアール2世の本名である。そう簡単に呼べる名前ではない。むしろ最近の神官ならば知らないだろう。