とある神官の話



「この時期にこれだけ降るのは珍しいのですか」

「ええ。降ったとしても村だけだなんておかしいですよ。ノーリッシュブルグも降りましたがここまでは……」




 レスティ・ムブラスキ神官が私と同様に並んで雪掻き作業を見つめる。


 聖都も雪が降るが、それより北方となると全く変わってくる。準備こそしてきたが予想外で、現地で上着と帽子を借りたのだ。足元はおぼつかない。

 一方のムブラスキは颯爽と雪の上を歩くものだから、私は必然的に彼の背後を歩くことになる。




「それで魔物は逃げたと」

「ええ。目撃者の話しだと熊のような生き物だったそうです」

「その魔物のせいなのか、これは……」




 村だけが真冬に包まれた状態だなんて。一応術陣を探したが見つからない。そもそも雪が邪魔であまり進んでいないのが現状だ。
 確かに村人がいう通り、"異常気象"だろう。一瞬熱湯でも撒き散らそうかと考えたが、そのあとが大変なのでやめた。ああ、何というか。聖都にヨウカハイネン達が戻ったのと、まさに入れ違うように私はノータムへ出発したのだ。
 しばらく彼女に会っていないからシエナ不足だ。せっかく……。




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