とある神官の話
大丈夫ですか、というムブラスキに返事をしながら、さて、とあたりを見渡す。
「村に術をかけましょう」
頷いたムブラスキ神官とともに、細い道を歩く。雪に包まれた場所が、雪のない場所に切り替わる場所まで歩いていく。先頭はムブラスキ神官。軽快な足取りで進んでいく。まだ雪に埋もれた道があるのもお構いなしなのには驚く。
雪道は歩きにくい、はず。あれだけ軽快に歩かれると自分は……と密かに落ち込むのだが。
雪を抜け、秋と冬の境目となった場所に出る。奇妙な光景だ。村を見ると雪で真っ白いのに、少々視線をずらせば秋。枯れ葉。
道具袋から手で持てるほどの大きさの石を出す。石といってもただの石ではない。術をかけてある。予め作っておいたものだ。それを掴み、落とす。石は落下し―――地面に沈んだ。まるで水に石を投げ込んだように、地面が波打つ。その波紋が続いたかと思うと、術陣が生まれた。
術陣はすぐに消えるが、これで"良からぬもの"が侵入してもすぐにわかる。そして村の中では弱まる。