とある神官の話
* * *
「くたばれハゲ」
「ハっ!?暴言ですぞ!フォンエルズ枢機卿」
隣にいるのは、キース・ブランシェ。先輩にあたるミスラ・フォンエルズは今日も絶好調らしく、暴言毒舌を吐きまくっていた。
枢機卿の会議で出席したのはいいが、とキースは胃の痛を訴えたくなった。
「猊下が今までどういうことをしてきたか。貴方はお分かりになっていないようだ。頭に気をつかう前にやることがあるだろう」
「黙ってきいていればっ……」
「私には何かに怯えているようにしか見えない」
静まった部屋。
ここ最近だ。約二十年程前にあった事件。アガレスの名前が出てくるようになったのは。
怯える気持ちは、キースはわからなくもなかった。問答無用に殺害された神官や枢機卿は多数いたのだから。
フォンエルズの手が机をとんとん、と叩く「ここにいるのは」
「あの事件を含め、ああいった輩から人々を守るためにいるのだが?」
年寄り連中め。
会議室に入る前、フォンエルズはそう漏らしていた。あの事件以前はもっと最悪だったらしいが、とキースは今日不在の証でもある、教皇の空席を見つめる。