とある神官の話



 教皇が不在でよかった。キースは視線を戻す。
 集まった枢機卿はみな、自分より年上ばかりだ。この中で若いのはキースか、この毒舌のフォンエルズか。しかしこのミスラ・フォンエルズは年齢不詳だった。

 ざわついた室内。





「怯えているのは貴殿ではないのか?」

「何故?」

「知っているような口ぶりだが、貴殿はあの時、聖都にはいなかったし、枢機卿になったのもそこの若造と変わらぬではないか」




 ヒーセル枢機卿が笑う。

 枢機卿といっても、みなが仲良しなわけがない。キースは堪える。自分でもわかっているからだ。若造だということか。
 老いた枢機卿たちから見たら、フォンエルズも若い方にはいる。まして見た目が若い。

 ヒーセル枢機卿が今のところ敵とも言える、か。キースは「若造ですが」と口を挟む。




「少なくとも、実際の事件に出歩き、その目で見ています。私は現場を知っているつもりでいますよ」

「……何がいいたい?」




 ヒーセル枢機卿が眉をひそめる。他の何人かの枢機卿も訝しい目を向けた。

 隣にいるミスラ・フォンエルズだけが小さく笑みを浮かべた。わかっているが、敵だけではない。いつだってそうだ。


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