とある神官の話
「今のヘーニルは危険ですよ。冷静さに欠ける」
「わからなくもない。長い付き合いだからな」
エドゥアール二世、という名より本名であるフォルネウスのほうが私にはしっくりきた。枢機卿としていた時代から、彼はかわらない。
ヘーニルとセオドラもまた、長いこと友人でもあった。私もその一人だ。だが私は立ち止まることは出来ない。フォルネウスも同じだろう。
「ラッセル・ファムランは牢獄から出ましたよ。これだけ早いとミスラには感心しますね」
「それで今は」
「目立ったことは出来ないので監視役に私をと。それから副局長代理にはエドガーが」
「……なあ、ハイネン」
雪の降る外を眺めながら、フォルネウスは温度の無い声を出した「アガレスは何が目的なんだ?」
疑問。
優秀な神官だった。愛されていた。確かに。彼は人を引き付ける。美しい人だった。私は目を伏せる。
彼が殺した神官は、"裏"があった。肥太らせた悪。信仰云々の問題以前の問題だ。そんな神官や枢機卿ばかりが、死んだ。そればかりではないが、意図があったとしか思えない。フォルネウスはそう言う。