とある神官の話





「俺より男前になりやがって」

「……好きでこんな顔をしてませんよ」

「俺は好きだがな。お前」

「言ってて恥ずかしくなりませんか」




 頭から手を退ける。顔を手の平で覆ったゼノンに、俺は笑う。「なあ」




「彼女が出来たら俺に――――って殴るなよ」




 凄い顔で睨んできたゼノン。ああ"あの噂"は本当なのだろうか。微笑ましくもありまた、寂しくもあった。
 後ろで「猊下」という声。供に連れてきた神官が青い顔をして、何事かと身構える。が、その神官を避けて顔を見せたのは見知った顔がいた「エドガー」

 そこにいたのは年配の神官、エドガー・ジャンネスである。笑み。後ろにいる神官が下がって消えていく。




「どこほっつき歩いているかと思ったら。全く」

「……口止めは意味なかったか」

「口止め?聞いたらすんなり教えてくれましたよ」



 まじかよ。通りで青い顔をしているわけだ。納得してため息。久しぶりに出歩いたってのに。
 ゼノンは理解したようで、「すみません」と謝る。エドガーはエドガーで「この人が悪いんですから」と笑み。うわ怖い。


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