とある神官の話
仕方ない。
ゼノンのことは任せて、戻るしかないだろう。想像できるのは書類。嫌になるなと思いはじめたころ「猊下」
「どうせなら父さんって呼べよ。で、どうした?」
「何故"彼女"なんですか」
彼女―――――シエナ・フィンデル。ゼノンの噂の女性神官。しかもよりによって"魔術師"の能力を持つ者。
ゼノンは真剣だった。それは神官の顔というよりは、一人の男の顔。一体シエナ・フィンデルは何者なんだ? ひねくれたゼノンをここまで惚れさせるだなんて「彼女はただの神官だったはすですよね」
そうきたか。
まあいずれ聞かれるかと思ったが。
「宝の持ち腐れにするつもりはない。彼女は経験を積むべきだと判断した。それから―――――」
「それから?」
「すまないが、言えない。だがな、彼女自身は一人にはならないようにはしているぞ」
「そう、ですか。……ありがとうございます」
引き下がったゼノンを孤児院に残し、俺は再び戻る。
エドガーが言っていた通り、人は変われるものだ。ああ、近いうち彼女にもあってなくては、と俺は思う。
子供が大きくなるのは早いな。
雪の降る聖都。
横を通りすぎる子供を俺は見送る。