とある神官の話


 ついさっき聖都に戻ってきた私達は、一旦別れた。上への報告書はノーリッシュブルグで作成し、私はただそれを局長に渡すだけだったからまだ良い。
 ノーリッシュブルグでレスティとヨハンと別れ、こちらにようやく戻ってきた途端、一気にいろんなことが緩む。ああやばいやばい。歩きながら泣いてどうする。



 リリエフとの対決。

 ノーリッシュブルグでの経験は、今年最大の出来事だった。指名手配犯の一人がいなくなった、ということは新聞にも載るほどのこと。改めてくらりとした。
 相手が相手だ。
 まだ浮つく。

 宮殿を出ようとした時だ「シエナ・フィンデル神官ですね」



「はい」





 やや年配の神官が私を呼び止めた。ええ、と頷く。少々いいでしょうか?と言われたのでついていく。
 その神官には覚えがない。聞けば私を呼んでいる人がいるとかなんとか。
 高位神官でもなにもない、下っ端な私に会いたいとは……。ブランシェ枢機卿とか?いやまさか。まさかね。ゼノンやハイネンならば直接私に会いにくるだろう。



「こちらへ」



 宮殿といっても足を踏み入れたことがない場所だって多々ある。神官についていったのはいいが、と私はとある部屋の扉に手をかける。



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