とある神官の話





 昔を思い出させる。嫌な光景だった。あの頃とは違って味方もたくさんいるのに、やはりまだ恐怖感があった「彼は」
 カップをテーブルに置き、ハイネンが口を開く。着替えたからいつものハイネンだが、違和感。ああ口紅のせいだろうか?




「実はいうとセラは、アガレスより謎が多いんですよねえ。まあ私より年上ですから、秘密の十も二十もあるのでしょうけど」



 思えば私も知らないことは多い。父はあまり自分のことを話さなかったし、唐突に変なことを言いはじめるのが常だった。
 ハイネンがいうように父なら秘密(と謎)を沢山抱えてそうだと私も感じる。



「あのセンスがシエナに引き継がれなくて良かったと心底思いますけどね」

「……それには私も同意する」

「センス?」

「そりゃもう壊滅的でしたよね?アーレンス」




 ああやはりそうなのか。
 私から見ても壊滅的だったが、私以外もそう思うあれだったのか。
 父はとにかく、センスが悪い。いや、家の家具はまあまあだが、服は壊滅的だった。アーレンスも頷くだなんて……。

 だがよ、とレオドーラが「お前、ちょっとズレてることあるよな」と言う。ズレてるってなんだ。
 それには何故か「まあ娘ですから」とハイネンとアーレンスが深く頷いた。




「それで―――どうするんです?見えたってことはシエナさんを探してたのは間違いないのでは?」




 話しを元に戻したゼノンに、一同無言。私が見た映像が謎過ぎる。それから、"真実"とは?幽鬼から聞こえたあれは何なのか。
 前に、アガレス・リッヒィンデルが私に言った言葉も意味不明なものだった。それといい今回といい、私が絡むものは厄介なことばかり。





< 495 / 796 >

この作品をシェア

pagetop