とある神官の話
「あれこれ上に知られると面倒だな。さすがにリシュターも黙ってはおるまい」
「リシュター枢機卿長はご存知ではないのですか」
「半分、といったところですかね」
アンゼルム・リシュター。枢機卿らの中でも枢機卿会議の議長、略して枢機卿長。同じ枢機卿であるキースらよりも上の地位だ。
半分?と聞き返した私に、珍しくハイネンが不愉快そうな顔をした。
「…シエナさんのことは知っていますよ。だが私たちよりは知らないはずですし知らせません」
「もしかして、嫌いなのか?そいつのこと」
「ぶっちゃけると、あれは何を考えているかわかりませんし、嫌いといったら嫌いですよ」
貴方がいうのか、貴方が。
ついうっかり突っ込みたくなったのは多分私だけじゃない。
アーレンスもまた何か考え込んでいた。リシュター枢機卿長らには臥せるべきだと言う。もしかしたら、危険だと本当に閉じ込められるかもしれない。何者かが狙っている、それが私であったとなるなら、過去がまた浮上する。今度ばかりは、危険だと。ほとぼりもまた冷めきっていないから尚更らしい。
そうハイネンが真面目な顔をして言ったため、レオドーラもゼノンも僅かに表情をかえた。
しかしアンゼルム・リシュターといったら、"話しのわかる"人物だと知られる。庶民派閥の枢機卿だ。悪い噂は聞かないのだが……「なら」
「手を打とう」
「手を打とうって……」
どうするんです、と聞いた私にハイネンがにたり、と笑った。
――――嫌な予感。
その予感は、多分当たるような気がするのは私だけだろうか……?