とある神官の話
色気もそっけもない悲鳴。
そこには、神官服を纏ったストーカー予備軍もといゼノン・エルドレイスが微笑んでいた。
「い、いきなり現れないで下さいよ」
心臓が煩い。
ぎろりと睨めば「姿を見かけたので」と気にしない顔でそこにいる。
「これからお昼ですか?」
「え、ええそうですが」
「ご一緒させて下さい。是非」
「……」
お一人だと危険ですし、と言われると断れない。私は頷く。
会議に出ているブランシェ枢機卿からは休みは好きにとっていいと言われていた。ただし、あまり一人で行動しないようにということだった。昼休みとして近場なら平気だろうと出てきたのだが…。まさかゼノンに遭遇するとは。
今宮殿では、各地から枢機卿が集まり大会議が開かれている。
私は不在となるブランシェ枢機卿の仕事を出来る範囲で片付けていたのである。もっとも「仕事なんぞ適当でいいぞ」などとフォンエルズ枢機卿に言われたのだが、そんなことは出来ない。そんなことしたらブランシェ枢機卿が倒れてしまう。
近くにあるカフェでお昼ご飯を食べることになったのだが、やはりお昼頃は人が多い「会議は」
「いつもながら揉めているようですね。ですがハイネンが枢機卿に選ばれるのは決定しましたよ」
「枢機卿か…」
初めて会った時、彼はミイラ男だった。それから随分親しくなったな、などと思い出す。いろんな人と出会って、私のために動いてくれて……。
――――父の、友人。
あのアガレスとも友人である。もともと父を含めて三人いたのが、今はハイネンだけが聖都に残っている。
出来れば昔話も聞きたいが、私の中にひっかかる"あれ"の方を先にどうにかしたい。
あのアガレスの事件について<彼が大切に思っていた女の、本当の死因をな>と、フォンエルズ枢機卿は話していた。あれから「後はハイネンに聞いたほうがいい」と言われそのままなのだが…「シエナさん?」
どうかしましたか、とゼノンに言われはっとする。