とある神官の話
亡友の断片
―――――???年。
「も、もう駄目だ!」
地方の小さな村などになると、魔物の被害が度々出る。大きな街ならば神官がいるが、村となるとそうもいかない。
魔物討伐に立ち上がった村の男たちであったが、魔物はオオカミのようなものではなかった。大きさはもっと大きく、それでいて獰猛な化け物だった。
化け物を見た男たちは、覚悟を決めた。恐らく自分たちは食い殺され、この魔物は村を襲うだろう。
――――その時。
すらりとした長身が、ぬっと森から姿を見せた。暴れ回る魔物と、瀕死な男たちの中では彼は間違いなく異質だった。深緑の髪をリボンで縛った男の顔もまた、場違いだと思ってしまうほど整っている。
それは若い青年だった。
自分の息子と変わらないくらいかもしれない、と傷を負った男がふと思い「おいそこの若いの!」と声を張り上げる。青年に気がついた魔物は咆哮をあげた。
魔物はつったっている青年に向かっていく。逃げろ!男は声を張り上げるが聞こえたかどうか。
「やれやれ」
青年は片手をあげた。逃げるそぶりもみせず、彼はそこに立つ。魔物の牙が彼を突き刺そうとした―――――が、その牙が青年の体を傷つけることはなかった。
むしろ傷ついたのは、いや、吹き飛んだのは魔物のほうであった。
青年は近くに落ちていた斧を手にとると、無造作に投げた。斧はそのまま吹き飛んだ魔物の額に直撃。倒れ伏した。
――――何があったんだ?
呆然としている男たちには、青年がとてつもなく救世主に見えたという。
例え、そう。
――――洋服のセンスが壊滅的でも、だ。
* * *