お姫様は王子様を演じてる




ベッドに座っていた兵藤が私を見て、ムッとしたような表情を浮かべた。



「……上野、早く着替えろと言ってるだろう?」


さっきまでふざけ半分だった兵藤の口調に、にわかに怪しむような感じが出だして…
何かを勘繰るような視線を私に向ける。



そりゃ、そうだ…
ボタンを全て外した状態で立ちすくんでたら誰だって不思議に思う。



―――時間がない。



「兵藤!後ろっ!」



咄嗟に私は何もない兵藤の後ろを、さも何かあるように指差しながら叫んだ。



「何っ、刺客かっ!!」



そんな訳の分からないことを言いながら、兵藤が後ろを振り返ったタイミングに合わせて着ていた上着を脱いでワイシャツを羽織る。


「……何だ、何もないじゃないか!!
いきなりどうしたんだ?」


「いや…その…ゴッ、ゴキブリがいたから!
兵藤のすぐ後ろに!」



苦しい言い訳だと自分でも思う。
だけど寝起きで頭の回らない私にはそれ以外の作戦は考えられなかった。


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