しあわせうさぎのおはなし
夕方になっても、くーちゃんは戻ってきませんでした。
夜になっても、くーちゃんは戻ってきませんでした。いつもなら「ただいま」と家に帰ってきたくーちゃんが抱きしめてくれる時間でしょう。別の道から帰ってしまったのでしょうか。ぼくは認めたくありませんでした。くーちゃんがぼくを捨てたなんて。くーちゃんがぼくを捨てたなんて。きっと昔みたいに迎えに来てくれるはずなんだ。そう、信じていました。
翌朝になっても、くーちゃんはきませんでした。
夕方になっても、くーちゃんはきませんでした。
夜になっても、くーちゃんはきませんでした。そうです、ぼくは捨てられたのです。くーちゃんが戻ってくることなど、もうないのです。最後にぼくをここに連れてきた、くーちゃんの体温を思い出して泣きました。誰に聞こえることもない声で、思い切り泣きました。