甘いケーキは恋の罠
1人悶々と考え込んでいると未来さんから声を掛けられた。
「ぼーっとしてるわよ。自己紹介がまだだったからするね。私は間未来<ハザマ ミク>。匠の恋人で~す。」
輝く笑顔と言えば良いのだろうか。
とにかく、こちらが気後れしてしまう程の笑顔を向けられた。
「新井瑞穂<アライ ミズホ>です。」
彼女がいたという悲しみと、匠さんと2人でいたことに対しての彼女である未来さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「瑞穂ちゃんごめんね~。どうせ匠が無理矢理連れ出したんでしょ?」
「いえ……。」
この場にいられなくなって思わず立ち上がろうとすると、匠さんが口を開いた。
「未来。彼女に変なこと言うな。いつお前が俺の彼女になったんだよ。秀<スグル>に言うぞ。」
「いいじゃない。ちょっとからかうくらい。だって瑞穂ちゃん純粋そうで可愛いんだもの。」
再び話についていけなくなった私は2人の会話に何も言えなかった。
「新井さん、彼女……未来は僕の兄の婚約者で、この店のオーナーをしています。たまにこうやってここに来てコーヒーの豆をいただいているんです。」