甘いケーキは恋の罠
ファッションビルを見て回りながらふと携帯電話を開くとメールが受信されていた。
[こんにちは。先日はお付き合いありがとうございました。先程新たに試作のケーキを完成させたので、ご都合の良ろしい日をご連絡下さい。]
匠さんからの初めてのメールに喜びつつも今週は月末で仕事が忙しく、なかなか予定をつけられないと落胆する。
[いえ、こちらこそ美味しいケーキを頂けて、楽しい時間を過ごさせてもらいました。今週は仕事が忙しく、いつ伺えるか分かりませんが、都合がつき次第ご連絡させていただきます。]
メールを送信した後沈んだ気持ちと共に軽く息を吐く。
「みっちゃん、どーした?」
そんな私に目ざとく気付くけんちゃんは伊達に長く付き合っているわけではない。
他の人には言えない悩みなんかを聞いてもらっていたのも、いつもけんちゃんだった。
勿論それも今ではもうないけれど。