甘いケーキは恋の罠
「あー、うん。仕事嫌だなぁーって思って。」
事実を話すのには気が引けたため若干反れた事を口にする。
「ふーん。みっちゃんでも仕事が嫌だって思うことあるんだ。」
けんちゃんは何処か遠くを見つめてそう呟いた。
けんちゃんは時々そうやって誰にも自分を見せようとしない時がある。
そんな時は私は何も言わないし、勿論けんちゃんから話すこともない。
「瑞穂っ、先輩?」
立ち止まった私達に先を歩いていたゆきが気付き駆け寄ってくる。
「あぁ、ごめん。みっちゃんがケータイ見ながらニヤニヤしてたから、何かねって思って。」
けんちゃんが笑いながら言った。
「ちょっ、けんちゃん!ニヤニヤなんてしてないじゃん!!」
慌て訂正するが、ゆきとけんちゃんは私を見てニヤニヤする。
「なぁに~、瑞穂ってば彼氏からのメール??」
悪のりするゆきは正直顔が可愛いとは言えない。
「もー、だから違うってば!けんちゃんもゆきも次行こっ!!」
そう言って歩き出すと、目の前には昨日会ったばかりの彼の姿があった。