家元の寵愛≪壱≫
「えぇっと………ここはどこですか?」
「フフッ、ここ?」
「………はい」
車が停車した場所は藤堂家では無かった。
地理的には意外と近いけど、見慣れぬ建物。
新婚夫婦が宿泊するようなホテルでも無い。
頭の中に『?』が浮かび、首を傾げていると、
「まずは、車から降りようか」
「あっ、……はい」
促されるまま車から降りると、
「おいで」
彼はそっと手を差し出した。
自然とその手に自分の手を重ねて……。
彼のエスコートで建物内部へと足を踏み入れる。
流氷を思わせる大理石のエントランスを抜け、
深々とお辞儀をする男性の前を通り、
通路の最奥へを辿り着いた。
そこは――――――――
「ゆの、じっとしてろ」
「えっ?/////」
突然、彼の腕によって軽々と抱き上げられた。
そして、器用にも指先で何かを押しているようで……。
―――――――ピピッ