Dearest
暫くするとドラマは終わった。



「…俳優は大変だね。恋人でもない人と普通にキスしなきゃならないんだもの」


「そうですね。まぁ感情のないキスですから何も感じませんが」



アキはラヴの言葉に少し嫌気が差した。




「…感情がないって何?感情を持たないで役を演じてるの?そんなんじゃいい役なんか演じられないよ」

「…アキ?」

「ラヴは何でもそうやって何もないように生きてるよね。…人間じゃないみたい」



アキがそう言うと、ラヴは机を殴ってアキの部屋を出て行った。



アキはラヴが殴った衝撃でテーブルに零れた紅茶の水滴を見つめる。




「…あたし何言ってるんだろ。キスシーンに嫉妬して酷い事言っちゃった…。そりゃ怒るよね。…ラヴは仕事でしてる事なのに…」



アキはその場にうずくまり泣いた。



キスに何の感情もないと言ったラヴ。


アキは前にロンドンへ行った時繋いだラヴの手のぬくもりも嘘のような気がして悲しかった。


アキにとっては幸せな行為もラヴにとっては何て事もない事。




そう思うとアキは
涙が止まらなかった。
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