天を衝く槍


「彼岸花と葡萄って?」


なんとかしてそういう話から抜け出した私は次の質問をぶつける。


「あぁ、それはシローの愛刀の名前だよ」


「二本持ってるんですか?」


「いや、結構持ってたと思うよ。あと蓮っていうヤツもあるんだけどさ、葡萄と蓮だけなんかすっごい思い入れがあるみたいで」


ギルは肘をついて遠くを見た。


私もつられてみると、夜景がきれいだった。


「……確かー」


ギルが遠くを見たまま、言う。


「葡萄が『酔いと狂気』でー…。彼岸花が『悲しい思い出』……だったっけ」


「…花言葉?」


ギルは私の言葉に頷いて、シローの気持ちも分からんでもないかと、小さくつぶやいた。


多分、チヤクが言ってた事だと思う。


彼女が言った、葡萄に喰われたいというのが『酔いと狂気』という花言葉を持った葡萄に斬り刻まれたいという意味なら。


……引くよね。


「…………………」


「…………………」


「…………………」


「…………………」


どうしてくれようか、このヤな空気?


「…………………」


ふと、ギルを見てみると、彼はじっと私の様子を観察していた。


「?」


「眠い。ごめん寝る」


「え、あ、うん」


ギルはフラフラしながら自分の寝る所へ帰って行った。


「………………」


私はその場で景色を見る。


相変わらず、綺麗な景色だった。


「……結局、一番聞きたいことは聞けなかったな…」


私は小さく呟いた。


……二年ってなんだ、二年って。

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