ある冬の日
頑張っている奴に『ガンバレ』なんて言えない。
だけど、『ガンバレ』以外の気の利いた言葉も思いつかない。
だって、今のこいつには先に進路が決まったオレからの言葉なんて何1つ耳に入らないと思うし、
それにもし耳に入ったとしてもそれは全部『進路が決まってるからそう言えるんだよ』って捉えられてしまいそうだったから。
だからそう言うしかなかった。
「じゃあ行くぞ優也~!」
ラリーが始まった。
シャトルを打ち返すとき、オレは心の中で『ガンバレよ、受験』とそいつにエールを送った。
この先の事なんてさ、誰にもわかんねーよ。
こいつ今すっげー不安なんだろうけどさ、オレだってもう進路決まったって言うのに不安しかないから。
ほんとにこの高校選んでよかったのかって、入試に合格した後の方がそう思うようになった。
オレはただスポーツ推薦もらったってだけでその高校を選んだ。
その高校を受験したら確実に受かるってわかってたから。
ぶっちゃけ、スポーツ推薦をもらったとき、もう進路に迷うことはないんだって安心した。