結婚白書Ⅰ 【違反切符】


夕方 俺を迎えにやってきた和音さんを お袋が強引に家に招きいれた。


さっきの俺とは違い



「初めまして 杉村和音と申します よろしくお願いいたします」



流れるように挨拶をしている。



「ご丁寧にありがとうございます こちらもよろしくお願いしますね

こんな素敵なお嬢さんが よくもウチのボンクラ息子と

お付き合いして下さる気になったわね もったいないわ~ ねぇお父さん」



なにが”ボンクラ息子”だよ 自分で仕組んだ縁談のクセに 

よくもそんなこと言うよ。


和音さんはと見ると 初対面の俺の両親と余裕で話をしている。


互いの両親にも受け入れられたってことか

このまま結婚話が進んでいくんだろうなぁ


漠然とではあるは 自分が結婚を決めたのがわかった。





夜の空港は意外に混んでいた。



「Uターンラッシュが始まってるのね 座る場所もないくらい」



繋がれた手を 前に後ろに振りながら彼女が言う。

人であふれかえっているロビーは 息苦しいほどだった。



「展望デッキに行ってみようか」 



飛行機が 立て続けに飛び立ち 夕暮れ時の空に吸い込まれていく。



空港ロビーの混雑がウソのように 展望デッキには人気がなかった。

建物内の空調の効いた快適さはなかったが 外の風は案外心地よかった。



< 23 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop