結婚白書Ⅰ 【違反切符】


コーヒーの香りが近づいてきて 彼の手が離れる



「明日も 朝から式の打ち合わせだね 

せっかく帰ってきても 最近は打ち合わせや準備に時間を取られてばっかりだ」


「そうね でも自分たちで決めますって 親や叔母さん達に 

大見得を切っちゃったしね・・・」


「そうだけど 結婚式の準備がこんなに面倒だとは思わなかったよ」



恨めしそうな顔が私を見ている



「ゆっくりデートをする暇もないよなぁ 来月 東京に来るよね

今度は社宅の案内だけだし ゆっくりできるんじゃないかな

また 俺の部屋に泊まるんだろう?」



高志さんが 意味ありげに口角をあげる

手を伸ばして その口を思いっきりつねった

こんな他愛のないことも 一緒にいるからできること

二人だけでいられる時間は あまりにも少なかった



翌日は ホテルで結婚式の打ち合わせ

二人の時間はあっという間に過ぎ去っていく





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