やわらかな夜
俺が望んでいたことが、今かなおうとしている。

有村が夫と別れ、俺と一緒になること――それは俺が1番熱望していた未来のはずなのに、俺は素直に喜ぶことができなかった。

――何でだ…?

「修司?」

何も言わない俺に、有村が名前を呼んだ。

――シュージ

当たり前だけど、有村とあかりは違う。

「修司が戸惑ってるのは、わかってるわ。

いきなり子供を堕ろすなんて、マジメなあなたからして見たら考えられないことですもの」

マジメ――人はみんな俺のことを、そうやって簡単に表現する。
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