やわらかな夜
けど今その望みがかなおうとしているのに、俺は素直に喜べなかった。

どうしてなのか、よくわからない。

「――俺は…」

俺は、一体何をしたいのだろう。

昼休みの終わりが、どんどんと近づいて行く。

それにあわせるように、コーヒーが冷めて行く。


会社が終わると、俺はあかりからもらったメモに書いてある店へと足を向かわせた。

「――えっ?」

店の前についた俺は驚いた。

「――ここ…」

彼女に失恋した時にやってきたバーだった。

あかりを拾った、あのバーだ。
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