結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


会社に入社して15年 仕事は楽しかった 

もちろん いいことばかりではないが

それなりに責任も増し 手応えを感じている


同僚の多くが結婚で退職した

結婚後も仕事を続けている人もいるが 家庭との両立は大変そうだ


結婚か仕事か・・・

不器用な私には両方をこなすのは無理

きっと どちらも一所懸命になりすぎる

それが私の長所であり 短所なのだろう




「円華さん きっと素敵な男性が現れますよ

円華さんって純粋で温かい人なのに どうしてみんなわからないのかなぁ」


和音ちゃんは いつもそう言ってくれていた

その彼女も もう会社にいない

結婚して地元を離れた


和音ちゃんの結婚は 私に勇気をくれた

私も肩肘張らずに 自然体でやってみようかな・・・





この時期にしては珍しい採用だった

前任者が 長期入院療養のため 復帰は無理だと突然退職した 

彼は その補充人員だった



「面白いヤツが入社してきたぞ」



人事課長が履歴書を見せてくれた

さっと目を通した

製造業に関する資格を いくつか持っている

他に 小型船舶操縦士免許 損害保険関係の資格なんてのもある


この人 資格を取るのが趣味なのかしら

面白いっていうより 変なヤツかも


改めて顔写真を見ると 「若いわねぇ・・・」

それが 彼に対する第一印象だった

生年月日を確認すると 29歳

若いはずだ 私より8歳も年下なんだから



「もう女子社員が騒いでるよ 体格はいいし 

顔は 男から見ればなんてことないが 

女の子から見ればいい男なんだろうね なんて言ったっけ なんとかメン」


「課長 それ イケメンって言いたいんですか?」


「そうそう そのイケメンなのかねぇ」



履歴書の写真をもう一度見た

この顔がイケメンなの?

そうかしら 私から見ればなんてことない顔だけど・・・

無愛想な顔じゃないの




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