結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


昼休みに女の子達が騒いでいた



「広川さんも見て ほら あそこ」



窓の外を見ると おじさん達のなかに若い社員が一人

あっ 彼だ!

周りのおじさん連中より 頭一つ大きい

ガッチリした体つきが 彼をより大きく見せていた


女の子達の声に気がついたのか 彼がこっちを見た私と視線がかち合い

”ジロリ” と睨まれた

なによ なによ なんで私を睨むのよ



「わぁー素敵!あの目 ステキよねぇ 背も高いし 着こなしもお洒落だわぁ」



目がステキって いま私を睨んだのよ! 印象悪いったらないわ!

背が高いって 確かに高いわね 

でかけりゃいいってもんでもないの 釣り合いが大事よ

着こなしがお洒落? 

ふぅ~ん ストライプのシャツがいいのかしら 

新人らしく控えめな色にしなさい!


女の子たちは まだ楽しそうに 彼の噂に興じていた

はいはい 勝手に騒いでなさい



新人君の名前は 工藤 要

実にふてぶてしい新人だった





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