結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


結婚式はしない

これは私の希望



「お式は挙げなくていいから 結婚写真だけは撮ってちょうだい」



これは 母の希望・・・





写真撮影当日


要のタキシード姿は 贔屓目なしにステキだった

今さら結婚式なんて と思ってたけれど 

彼と並んで写真を撮りながら 結婚式を挙げても良かったかな・・・

なんて思ったりもした



「俺もなかなかだろう? こんなにタキシードが似合う男 

滅多にいないと思うね」


「そんなこと 自分で言うかなぁ 私だって このドレス 

なかなか似合ってるでしょう? 惚れ直したんじゃないの?」


「うん 惚れ直した」



もぉ 直球を投げてくると 答えに困るじゃないの


そんな私達を 両方の母が笑いながら見ていた





結婚写真を一番喜んだのは 意外にも父だった



「お父さん 写真をそばに置いて 時間があると眺めてるのよ」



母が可笑しそうに こっそり教えてくれた








1ヶ月後 私たちは入籍した





意外だったのは 要が入籍した日から結婚指輪をはめたこと

結婚後 初めて出社する日も指にはめられていた

出社すると 目ざとい女の子達が騒ぎ出した



「工藤さん その指輪 もしかして 結婚指輪だったりします?」


「あーそうだよ 昨日結婚したばかり 嫁さん共々よろしくね」



あとは 女の子達の悲鳴のような歓声



「あのー 奥さまって 広川さんですよね この前みたいに 

”まどか” って呼ぶんですか?」


「まぁね」



彼は こっちを見て ニヤリと笑っている

またもや 女の子達の悲鳴


ちょっと そんなに彼女達を刺激しないでよ 

私 憎まれるじゃないの

要をにらみ返したが 彼は何食わぬ顔


私の周りにも人垣が出来た



「広川さん 指輪を よーく見せてください」



私の薬指に あらゆる角度から視線が飛んできた



「わぁ~ ダイヤが埋め込まれてる それも3つも フツーは一個よね 

さすが広川さんね」


「なにが ”さすが”なのよ! それって歳がいってるって事かしら?

そうよ 若くないから3個にしたの」



また わぁーと どよめきのような歓声が上がった



「ねぇ ねぇ 広川さんは工藤さんを なんて呼んでるんですか?」


「そんなの どうでもいいじゃない」



要の方を見ると 涼しそうな顔をして私の答えを聞いている

もう アイツったら平気な顔してるわ

こっちが恥ずかしいじゃないの



「わぁ 広川さん照れてるぅ あっ 広川さんじゃないですね 

今日から工藤さんなんだ」



散々からかわれ 這々の体で逃げ出した




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