雪の果ての花便り


だけど後悔の先にも道は開けると信じていたなら、私は『これが自分の精いっぱい』なんて限界を決めることはなかったのかもしれない。


私はそれを後悔しないための方法だと思っていたけれど、本当は『自分ができる最大限のことをした』ってダメだったときの言いわけにしていたのかもしれない。


かっこわるい。中途半端だ、なにもかも。

それなのに後悔の裏側で、欲張りな私が顔を出してしまう。


訊けないことばかりで、わからないことばかりで、それでも再び会えた大好きな人に望むのは、もう一度そばにいたいってこと。


好きですって伝えたくて、さよならなんて一度だって言いたくないってこと。


「彪くん……どうして今ここにいるんですか」


俯いた私を追うように、ボストンバッグも下げられた。ず、と鼻をすすった私に、

「じゃあ先に説明しようか」

と彪くんは教えてくれた。


「俺んちって転勤族でさ。今月中には家族そろってフランスに引っ越すはずだったんだけど、俺は残って料理の勉強をしたいと思ってたから、ずっと親を説得してて。でもうちって家族みんな仲いいから、嫌がられちゃって」

「……帰る家がないと言っていたのは……その、」

「うん、そう。反発心っていうか、便乗? 両親とも説得できなくて、あーこれは無理かなあって諦めかけてたら、妹が失踪しちゃったんだよね」


……、妹? 顔を上げると気づいた彪くんが苦笑をもらした。


「妹も日本に残りたいって言ってたんだよ。本気を伝えるためか、もう家には帰らないって大晦日に突然いなくなっちゃって。だから俺もそれに便乗しつつ、妹のことずっと探してたんだ」

「え、でも、探していたのは好きな子なんじゃ……」

「ごめんそれ、かけ引き」

「は……?」

「俺、好きな子とは言ってない。妹とも言わなかったけど」

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