奴隷戦士
そういえば、この前、久々に鷹介と一緒に悪戯をした。
木魚を叩くものをお玉に変えて、気づかずにポクポク叩くかなーって。
気づかないわけがない。
1発でバレた。
どうしようかと考えて、そういえば、木のお玉だから見た目はそんなに変わらないと思ったけど、そういえば木魚を叩く方には木魚が傷つかないように白い布で覆われていたことに気づいた。
これは誰でも気づく。
よほど鈍い人でなければ。
だとしたら、なかなか頭を使うイタズラになってしまうなと。
「紐紫朗、あんた聞いてるかい?」
「…っあ」
新しいお手伝いさんに怒られながら考えてた。
そして、その一週間後、ぼくはそのイタズラを成功させた。
今度はちゃんと白い布をつけて、ついでに鈴も入れて。
だから木魚を叩くと微妙に硬い音と鈴の音がした。
すると鷹介がとても怒られた。
前に「おっさまについていく」と言って、彼らにとって大事な道具をいたずらでも蔑ろにしたことが許せなかったらしい。
おっさまが激怒していて、ちびりそうになった。
そっちばっかりで話の内容ほとんど覚えてない。
こういう悪戯はよくないと身に染みた日だった。
それから、三日くらい経ったあと、鷹介とぼくが罰に当たったように風邪を引いた。
「夏に風邪をひくものはバカだと相場が決まっているんだよ」
うんうん唸っている鷹介のそばで、おでこの濡れた布を替えに来たお手伝いさんが言った。
すると、唐突に鷹介が動いた。
「おろろろろろろ…」
「うえ、寝たままゲロした…鷹介器用だね…」
「バカ、どう見ても桶に間に合わなかったんでしょう」
ブツブツ言いながらせっせと汚れた所をきれいにするお手伝いさんを見て、ぼくは彼は愛されていると感じた。
もし、ここでぼくが鷹介と同じようなことをしたら、彼女は心配してくれるだろうか。
なんてことを考えているうちに、いつの間にか意識が飛んでいた。
「……ろ…しろ。紐紫朗、起きてるか?」
その声でハッと目を開けると、目のまえに鷹介がいた。
「…悪い顔だ」
寝惚け眼でも分かるくらい、悪い顔だった。
「かくれんぼするで」
「え、誰から?鬼は?っていうか、鷹介、まだ熱あるんじゃね」
「あ、そうなんかね?なんかフラフラするし、頭重たい」
「それ熱じゃん」
「いやでも、動けるんやから大丈夫やろ。いくで!」
「え」
彼に引っ張られて、外に出る。
夕暮れ時だった。
二人でフラフラしながら鐘の近くへ行くと、鐘が二つあった。
「あれ、鐘って二つあったっけ?」
「え、俺には三つに見えるねんなー。おかしいな」
「え、いつの間に建てられたんだろ」
フラフラしながら、鐘を触ろうとしたとき、足元がガクンッと下へ引っ張られた。
「おい!大丈夫か!!?」
ぼくは何が起こったか分からず、呆けていると鷹介が寄ってきた。
「あ、三郎(サブロウ)だ。よかったな、紐紫朗」
え、何が。
と思ったけど、ぼくが鐘をつくところから落ちそうになったのを、三郎が支えてくれたのだった。
「あ、ごめん。ありがろ」
熱のせいか、呂律がまわってなかった。
「さすが、年長やけん体もでかいなぁ。頼りになるわ」
「ははっ。確かに体も年も上だが、これはこれで困ることあるんだぜ」
「ほーん?なんなん?その大変なこ―――」
「なァにしとるか!お前らは!」
とんでもなく大きな声が鷹介の声を遮った。
「あ、お手伝いさんじゃん。なんであんな怒ってんの?」
「知らん」
「お前らって誰?ぼく?ぼくら?」
なんてのんきに、何にそんなに怒っているのかと疑問に思っていた矢先だった。
「熱出して外へ出るバカがおるか!このバカやろうども!」
あ、ぼくか。
「お前らかい」